法人が銀行融資を受ける審査基準となる信用格付とは

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銀行の信用格付は審査決定の最大ポイント

企業事業者にとって、銀行などの金融機関との関係は無くてはならないものです。とくに融資を受けることができるかどうかは、事業を継続するうえで大きなポイントとなります。
銀行融資を受けるには、必ず審査に合格しなければいけません。銀行の審査担当者は、企業のどのようなところを見て審査評価を行うのでしょうか?

 

そのポイントとなるのが「信用格付」です。あまり一般の方にはなじみは薄いですが、審査決定の最大のポイントである「銀行の信用格付」について考えてみましょう!

 

信用格付とは

みなさんは「国債の格付が下がった」というようなニュースを聞いたことがありませんか?国債の格付とはその国の資本力などを総合的に評価して判断されます。
実は銀行内部でも、融資先に対して同じような総合評価を行っています。それを「信用格付」といいます。

 

信用格付とは、銀行などの金融機関がつける成績表のようなものです。各金融機関は信用格付に対する独自のスコアリングシート(得点表)により、融資先の内容を点数化して、いわゆる「ランク付け」を行っています。

 

金融機関の役員などは企業のすべてを網羅することは事実上不可能です。そのため信用格付から企業に対して、ある程度融資を行っていいのかどうかの判断を行うことになります。

 

信用格付が高いと評価されると、次のようなメリットが考えられます。

 

  • 希望通りの金額、返済期間などの融資条件を満たしやすい
  • より低い金利で借入することができる
  • より迅速に融資を受けることができる

 

逆に信用格付が低い場合には、これとは逆のデメリットが発生することになります。つまり銀行融資を上手に活用するには「より高い信用格付を得ること」が重要となります。

 

信用格付の仕組み

では実際の信用格付はどのように行われているのでしょうか?
信用格付は、次の3つのステップを経て決定されています。

 

①定量評価

決算書の数字に基づく評価です。最近では「決算書分析システム」などを導入し、財務スコアリングモデルにより自動評価が行われています。評価基準となる財務スコアリングのモデルは、金融機関により多少の差はありますが、大筋では同じものといえるでしょう。
主な財務スコアリングは、次の4点に分類されます。

 

安全性
自己資本比率(%) 自己資本÷総資産→企業の体力を示しています。
ギアリング比率(%) (短期・長期借入金+社債)÷自己資本→資金調達のうち借入金の自己資本に対する割合を示しています。
固定長期適合率(%) 固定資産÷(固定負債+自己資本)→固定資産をどの程度長期資金で賄えているかを示しています。
流動比率(%) 流動資産÷流動負債→流動負債を流動資産がどの程度カバーしているか、つまり即資金化できるかを示しています。

 

収益性
売上高経常利益率(%) 経常利益÷当期売上高→売上に対してどれだけの経常利益を上げているかを示しています。
総資本経常利益率(%) 経常利益÷総資産→資本投入により、どれだけの利益を生んでいるのか、資本の運用効率を示しています。
収益フロー 黒字が何期続いているのかを判断します。

 

成長性
経常利益増加率(%) (当期経常利益ー前期経常利益)÷前期経常利益→当期末と前期末の経常利益の比較から、業績規模の拡大を判断します。
自己資本額 自己資本の金額が大きいほど、財務的に安全と判断されます。
売上高 企業の成長性を示しています。

 

返済能力
債務償還年数(年) (有利子負債ー運転資金ー現預金)÷(経常利益+償却費ー税金)→借入金を利益などによるキャッシュフローから何年で返済できるかを示しています。
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) (営業利益+受取利息・配当金)÷支払利息・割引料→企業の利息の支払能力を示しています。
キャッシュフロー額(円) 営業利益+当期減価償却実施額→企業の返済原資を示しています。

 

定量評価では、この4つの指標がバランスよく得点を稼ぐことで高い評価を得ることができます。
決して「黒字ならOK」というわけではないのです。

 

②定性評価

定性評価とは、市場動向や経営者・経営状態、営業基盤、競合状態などの評価です。これらは決算書上の数値では評価しにくい項目ですが、銀行の担当者の主観などを背景にして点数化されます。
評価の対象は、具体的に次のような内容になります。

 

  • 経営者の能力
  • 市場の将来性・成長性
  • 過去の返済履歴
  • 経営計画策定能力・財務管理能力
  • 販売力
  • 技術力
  • マスコミの記事内容
  • 業歴
  • 他社との競合状態
  • 株主内容
  • 従業員のモラル

 

③実態評価

実態評価は、①や②の評価対象には該当しないものの、融資の返済能力を左右事項についての評価です。
具体的には、次のような内容となります。

 

  • 不渡手形、回収不能売掛金、換金不能な不良在庫、貸付金の回収不能分→資産とはみなされないので控除します。
  • 代表者(オーナー)、支援者、関連企業の資産余力が加味できる内容→返済能力にプラスされます。

 

一般的にメガバンクと呼ばれる銀行では信用格付の内容はほぼ100%定量評価で判断されるといわれています。一方地方銀行や信用金庫では、定量評価が70%~60%、定性評価や実態評価が30%~40%のウエイトを占めるといわれています。
どちらにしても、銀行担当者は積極的に会社の実態を格付に反映させることはなく、決算内容により信用格付の方向性が決められるといってもよいでしょう。

 

債務者区分の決定

「定量評価」「定性評価」「実態評価」を基にした信用格付の結果により、融資先は6つの債務者区分に分類されます。分類された債務者区分により、以後の融資スタンスが決定されていくことになります。
とくに「要管理先」より下のランクに分類されてしまうと、新規融資はまず受けることができなくなります。

 

①正常先

業績が良好で、かつ、財務内容にも特段の問題がないと認められる債務者です。決算書上では「当期利益がプラス」「純資産の部にマイナス(繰越損失)が無い」の2点の条件を満たしていなければいけません。
ただし赤字でなっても、次の場合には正常先と判断されることもあります。

 

創業赤字で当初事業計画と大きな乖離がない場合

創業時は、開業資金などで特別な費用が計上される可能性が多く、赤字を計上してしまいます。この場合、当初計画の売上高などの目標が7割程度達成している状況では、正常先と判断されるケースがあります。
この場合、計画により5年程度で黒字化することが求められます。また多くの金融機関では営業黒字を条件としていますので、営業活動上で十分に収益を上げていることが必要になります。

 

一過性の赤字で、短期に解消できる見通しの場合

赤字の理由が固定資産の売却損など一過性のものである場合です。減損損失の計上や有価証券評価損の計上なども、一過性の赤字と認められることもあります。
この場合、決算上の最終段階の赤字であることを想定していますので、営業損益・経常損益の段階では黒字であることが前提になってきます。

 

②要注意先

業績不振で財務内容に問題がある、返済状況に問題がある債務者です。決算上で、次のような場合には要注意先と認定される可能性が高くなります。

 

  • 当期利益が赤字
  • 融資の返済が1ヶ月以上延滞している
  • 純資産の部にマイナス(繰越損失)がある
  • 債務超過

 

③要管理先

要注意先の中で「3ヶ月以上の延滞」「貸出条件の緩和(条件変更)を行っている」債務者は、別途「要管理先」と認定します。

 

④破綻懸念先

現状、経営破綻の状況にはないが、経営難の状況で、経営改善計画等の進歩状況が芳しくなく、今後経営破綻に陥る可能性が高いと認められる債務者です。
次のような場合には破綻懸念先と分類され、新規融資どころか、既存融資の早期回収や既存融資金利の上昇なども求められることになります。

 

  • 2期連続債務超過で、かつ融資の返済が3ヶ月以上延滞している
  • 融資の返済が6ヶ月以上延滞している

 

⑤実質破綻先

法的・形式的な経営破綻の事実は発生していないものの、深刻な経営難の状況にあり再建の見通しがない状況にあると認められるなど、実質的に経営破綻に陥っている債務者です。

 

⑥破綻先

法的・形式的な経営破綻の事実が生じている債務者です。倒産・清算・会社整理・会社更生・和議・手形交換所の取引停止処分などの事由により経営破綻に陥っている状態です。

 

債務償還年数と債務者区分

これらの債務者区分の決定で、最近の銀行が重視しているのが「債務償還年数」です。信用格付の「定量評価・成長性」財務スコアリングで登場しましたが、キャッシュフローベースでの返済能力を示しています。
銀行側からすれば実際に融資を返済してもらえれば問題ないことになりますので、極端な話収益力が低くても、債務償還能力が高ければ問題ないといえます。
逆に収益力が高くてもキャッシュを稼げていない場合には、延滞や貸倒のリスクが高いと判断され、債務者区分を下方評価することもあります。

 

債務償還年数の計算方法は、以下の通りです。

 

債務償還年数(年)=(有利子負債-運転資金-現預金)÷(経常利益+償却費-税金)

 

ここでポイントとなるのが「償却費」の取扱です。適切に償却が行われているか、償却不足がないかなどのポイントを銀行担当者が調査することになります。
また不動産賃貸業やパチンコ業などでは、償却費は今後の事業継続のための必要経費としてみなされ、返済原資(キャッシュフロー)に加算できないと判断されるケースが多くなっています。
例えば償却資産が古くなった場合には、当然資産を新たに購入しなければならず、償却費がその「積立費用」としてみなされるのです。

 

債務償還年数と債務者区分は、概ね次のような関係にあります。

 

正常先 債務償還年数10年未満
要注意先 債務償還年数10年以上20年以下
破綻懸念先以下 債務償還年数20年以上

 

ホテル業や不動産賃貸業など、借入期間が長期になる業種では、30年以上かどうかが正常先と要注意先の見極めラインとしている金融機関が多いようです。

 

信用格付と取引スタンス

信用格付の結果は、銀行の取引先に対する融資スタンスを決定する根拠となります。多くの銀行は信用格付の結果を「12ランク」程度に分類しています。
例えば「○○社は1格」「△△社は5格」という具合で、数字が若いほど格付が高いものになっています。そしてその格付と債務者区分を連動させ、融資をどのように行っているのかそのスタンスを決定するわけです。

 

多くの銀行では次のような取引方針(A~E)を決定していきます。

 

信用格付ランク 取引方針
正常先(1格・2格) A(積極推進方針)
正常先(3格・4格) B(推進方針)
正常先(5格・6格) C(現状維持方針)
要注意先(7格) C(現状維持方針)
要注意先(8格) D(消極方針)
要管理先(9格) D(消極方針)
破綻懸念先(10格) E(取引解消方針)
実質破綻先(11格) E(取引解消方針)
破綻先(12格) E(取引解消方針)

 

信用格付と貸倒引当率

信用格付の結果は、銀行の貸倒引当にも影響を与えます。銀行では融資金に対して、返済不能に対するリスクのために、一定の貸倒引当金を計上しなければいけません。その引当率を決定するのが、信用格付なのです。
債務者区分による貸倒引当率は、主に次のようなものになっています。

 

債務者区分 貸倒引当率
要注意先 1.0%~数%
要管理先 約15.0%
破綻懸念先 70%以上
実質破綻先・破綻先 100%

 

要管理先に分類されると、一気に貸倒引当率が上がるのがわかります。通常の貸出金利では、要管理先に融資を行うことで、銀行側は金利を上回る貸倒引当金を計上しなければいけなくなります。この点も要管理先以下が新規貸出が困難である理由となっています。

 

信用格付を銀行に聞く方法

銀行との融資を有利に行うには、自社の信用格付を知ることがポイントとなります。もっとも良い方法は銀行に直接聞いてみることでしょう!
かつての銀行は、信用格付の結果や債務者区分を取引先に公表することはあまりありませんでした。悪い結果を伝えることで、取引先とのトラブルにつながることを恐れていたためです。

 

ただし、最近では金融庁の指導もあり、取引先に対する総合的なコンサルティング業務の一環として、正確に信用格付や債務者区分を伝える銀行も多くなっています。企業側に現状をしっかり認識してもらう意味合いもあるでしょう。

 

信用格付の結果や債務者区分を知りたい場合には、次のように担当者に相談してみてはどうでしょうか?

 

 

現状をしっかり認識し、自社の経営にもつなげていきたいので信用格付を教えてはいただけませんか?


 

きっと銀行側も嫌な顔はしないのではないでしょうか。

 

信用格付を改善するポイント

自社の信用格付を知ることができれば、次は問題点を改善しなければいけません。自社のウイークポイントを押さえ、適切に対処することで、信用格付を改善することも可能でしょう。
次のようなポイントを把握して、長期的に課題に取り組んでいきましょう!

 

①収益性の改善

固定費の削減

  • 費用対効果の低い科目を知る
  • 相見積もりや他仕入先との比較を定期的に行う
  • 広告宣伝費の支出効果を具体的に調査する

 

限界利益率の改善

  • 販売単価の見極め
  • 請求漏れはありませんか
  • 在庫ロスを発生させない
  • 仕入単価などの取引条件の交渉

 

②財務体質の改善

資産と負債のバランス

  • 受取手形・売掛金の回収時期の見極め
  • 短期借入金の長期借入金へのシフト
  • 役員借入の利用による、銀行借入の圧縮

 

自己資本比率の改善

  • 役員借入金を資本金への振替の検討
  • 増資の検討
  • 繰越損失のある場合、役員借入金の債務免除の検討

 

③経費処理の改善
  • 営業利益に該当する収入が営業外収益や特別利益になっていませんか
  • 臨時的・偶発的な費用が経常的なものとして組み入れられていませんか
  • 30万円未満の償却資産を、資産計上し全額償却する処理をしていますか
  • 倒産防止共済の掛け金は、資産計上していますか